日々のこと

2014年9月4日

文化財は使ってなんぼのもん

カナカナカナ……黄昏どきにヒグラシの鳴き声を耳にすると、
いそいそと“お盆さん”の準備に入る。

折しも、旧盆を前にしたロータリー卓話のお題が「お釈迦様の周辺」。
料亭「牡丹」のご主人・石上俊一さん(東京芝RC)の話は、時空を超えた釈迦行脚。
四大聖地といわれるインド、ネパールに加え、交易の道に及ぶ歴史と検証の壮大な物語だった。
仏教徒と声高に言わずとも、ご先祖様の墓守りを自認している私としては興味津々。
石上さんの持参した仏像に魅入り、何故か文化財保存・保護にまで思考が飛んでいった。
彫刻家・籔内佐斗司さん(東京藝術大学大学院美術研究科教授)に、
仏像修復の話を伺ったばかりのせいかも知れない。

「文化財保存には3つの大原則があります。
① 作られたときの当初部材を残すこと
② 現状維持修理
③ 後世の人が再修理するときに当初部材を破壊しないよう戻せることです」

ところが、この3つは矛盾している。
仏像の修復には、各状態を複数の専門家と相談しながら、
3つの大原則でバランスをとりつつ「常に今」考えられる最高の方法で挑む。
今、修理の方法が見いだせないときは手をつけずに、
後世の科学の進歩や技術にゆだねるのだそうだ。
さらに、文化財は保護されるべき対象であると同時に、活用されるべきものなのだとも。
「西洋流の文化財保護は、触ってはいけない、このまま残すという考え方が強いが、
日本の文化財保護は使ってなんぼのもん。日本の方法を世界基準にと考える」(籔内)。

茶碗、能面、仏教建築にしろ、日本には昔ながらの修理の方法と知恵があるという。
「博物館に入った茶道具は死んでしまう」という茶人の言葉を例に、壊れたら接げばいい。
「使うために生まれてきた物は使わなくては。そうして、何か不具合が起きたときのため
に、我々が存在しているのです」と。

崇めるモノの他に、人々の手に触れてこそ残っていくモノがあるという、
大胆な文化財保存と保護の在り方に、あらためて背中を押された今年の夏でした。
            
             (ジャンコ記/東京世田谷中央ロータリークラブ 週報vol,735寄稿)

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2014年6月20日

越路吹雪さんと夢喰う獏たち

ある日ある時、ロータリーの卓話を前に、しばしテーブルを囲みながら、
会員たちによる談笑があった。
話題は「極度の緊張とあがり症」に及んだ。
「あがり症といえば、往年のスター・越路吹雪さんだよね」と、
どなたかの発言に心の中で「ハーイ」と片手を上げた私がいた。
 
劇団四季の研究生時代、
日生劇場では越路吹雪主演『アプローズ』(演出・浅利慶太、劇団四季制作)の公演真っ只中。
そんな中、楽屋当番を仰せつかったのが研究生たちだった。入所して数か月。
右も左もわからない、夢だけを喰う獏みたいな若者たち、それが5期生。
役者志望や演出部に憧れて入所した20数名のなかの一人が私だった。
美しい日本語を話す同期生のなか、地方なまりが抜けきらず緊張で倒れそうになりながら、
「お茶出し」や「電話受け」をしていた。

開演5分前のベルが館内に鳴り響く。

薄暗い舞台袖で越路吹雪さんが小鳥のように震えていた。
緞帳が上がり緊張の旋律がカラダを貫く。
途端に背筋が伸びて、スポットライトに浮かびあがったのは、
ドレスの裾を翻し、満面の笑みを浮かべる“大スター越路吹雪”。
研究生にとって、それはマジックとしかいいようのない光景だった。
これが東京、これが本物の舞台、これが大女優の偽らざる姿。衝撃だった。
ちっぽけな自分をさらにちっぽけに感じたが、この場に居られる幸福を存分に味わった。
マネージャーの岩谷時子さんから背中に指で「トラ」と書いて貰い、
「あなたはトラ、何も怖いものは無い」と暗示をかけては、
ステージに向かっていたという有名な越路さんの逸話は、そのとき先輩から聞いて知った。

私たち夢喰う獏は、後に“ゴミの5期生”と自分たちを呼んだ。
一期下の俳優、鹿賀丈史さんや市村正親さんのような逸材が出な
かったことにある。それでも、目を輝かせて旅公演やこどものミュージカルで頑張っていた。
 
実は、越路さんに対して飛んでもなく不遜な言い方なのだが、
あがり症は、新米の研究生たちにも襲いかかったのだった。
舞台の真ん中に片方の靴を落としてきた子。
“あせりエンジン”と呼ばれていたバクテンの得意な子は「出トチリ」が多く、演出家から怒鳴られていた。
そんなときの、みんなの合言葉は「あがり症なのは、いい役者になれる条件!」。
同期生の結束は固い。

翌年、本場のミュージカルやコメディ、芝居を観ておこうと欧州を1か月旅した。
ロンドンのピカデリーサーカスの前で、偶然に出会ったのが越路吹雪さんとご主人の作曲家・内藤法美氏。
「あなたたち、どこに泊まっているの」と。勿論、若者の旅のこと、B&Bの安宿だった。
すると、胸に抱えていた果物のオレンジ入り紙袋をそのままくださった。嬉しかった。
憧れの越路さんご夫妻からの贈り物。このときほど、舞いあがったときはなかった。
でも、一生分の“あがり症”を体験した瞬間、オレンジが1つ袋からこぼれ落ちていった。

               (ジャンコ記/東京世田谷中央ロータリークラブ 週報vol,726寄稿)

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2014年5月31日

ノベンタ、世界を巡回中?!

世界・全国各地に旅立っていたノベンタメンバーたちが、ようやく帰還しました。

……というのは大げさですが、
ここしばらく、それぞれ旅をしておりました。

ジャンコ社長は、日本最古のパワースポット・出雲大社へ。昨年、60年にいちどの本殿遷宮を迎えた出雲大社へ「おかげ参り」です。旅行中、高円宮家・次女の典子さまと出雲大社の神職・千家国麿さんが電撃・婚約発表をされたのは、偶然のご縁。「やっぱり引力のある人!」と、周りでささやかれたのは言うまでもありません。

つづいてマツさん。こちらは家族でスペインへ。120年以上も建築をつづけているサグラダ・ファミリアが2020年に完成するらしい、という噂を聞きつけ、行くなら「今でしょ!」と飛び立ちました。どうやらスペインで雨オンナは返上できたようです。その証拠は、次の取材のお楽しみ。

そしてハッシー。ピンチヒッターで参加した「女性のための豊島・直島建築散策ツアー」が、祖父のルーツを巡る旅となりました。実は、ハッシーの祖父は有名な彫刻家の速水史朗さんです。各県にひとつは、その作品を観ることができるとか。史朗さんの友人だったイサムノグチの美術館では、スタッフさん達が大歓迎。ぷにぷにのほっぺをホクホクさせて報告してくれました。

とり残された私ですが、6月後半に、北欧・ヨーロッパへ海外取材に行って来ます。ドイツ、オランダ、デンマーク、スウェーデンと、3泊4日ずつ介護施設を巡るという、なんともタイトなスケジュール……!自他共に認める方向オンチなので、最優先課題は迷子にならないこと(私にとって、グーグルマップは猫に小判)。お土産話を楽しみにしていてくださいね。(トノチカ記)

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2014年5月5日

記憶の中で、ち・けん・たん

バブル期の余韻が残っていた1990年代、豪勢な子ども雑誌の創刊に、
クリエイティブ ディレクター&ライターとして携わったことがある。
たとえば、アメリカの国立スミソニアン博物館の巻頭特集から俳優ハリソン・フォードのインタビュー、
国内外の有名私立幼稚園取材まで、国際色あふれる月刊誌だった。

執筆していたのは、「老舗の帝王学」という連載頁。
特権階級を彷彿させる「帝王学」というタイトルにちょっと違和感を持ったものの、
気を取り直して、取材しては原稿にしていった。
真意としてきっと、家業を受け継いでいく日本の老舗には、口伝の子育てや家訓があるはずと思っていたからだ。
想いどおり幼い跡継ぎを目の前にし、突いて出た祖父母や両親の言葉は、魅力的だった。
「1歳から本物を与えます。食器も本漆や陶器。プラスチックではありません。
伝統文化を受け継ぐとは、そういう子育てから始まります」とは銀座の呉服屋さん。
また、「変わらぬ昔のままの味と言っていただくのが店の勲章」と話すのは和菓子屋さんの11代目。
実は時代の嗜好と共にご贔屓筋にはわからぬよう、少しずつ味を変化させているのだそうだ。
そのさじ加減を身に着けさせる。実は老舗の老舗たる由縁はここなのかも知れないと感じた。

そんな中で、陽明学の思想家・安岡正篤氏の言葉を引用しながら
「知(ち)識・見(けん)識・胆(たん)識」と、人間には器量が必要だと説いたご主人がいた。
知識を勉強し、見識をそだて、それから腹をくくる。
自分の思っている意見や行動が他人と違っているからといって、臆病になったりせずに、
堂々と実行できる肝の座った器量のある大人になりなさいという子育てだった。
さらに、商いをするうえで自分だけの学識や能力では当然限界がある。
門外のことを教えてくれるブレーンの重要性。
友人も大切だが、尊敬に値する良き師を見つけて、いつも傍にいてもらうべきという帝王学の教えだった。
残念ながらこのくだりは誌面にはならなかったが、印象深く心に残っている。
政治家や会社社長など、数多の意見から独自の道筋をつけなければならない人には、
必ずこのような師がいるといわれている。

こんなことを書くと徳川家康のご意見番、あるいは黒幕だったと噂の大僧正天海までもイメージしてしまうが、
とらえ方は金子みすゞの詩「わたしと小鳥とすずと」の最後の行に出てくる
「みんなちがって、みんないい」の言葉。
スマップの歌う「世界に一つだけの花」の歌詞にも重なる。要は、世界に一つだけの花になるには、
もう一歩思考を進めて、腹をくくらせてくれるほどの知識と見識を備えた師の「存在」と、結ぶべきなのかも。
否、敢えて“胆識”という言葉を今の世に問うてみたい。五月晴れの空を仰ぎながら……ね。

            (ジャンコ記/東京世田谷中央ロータリークラブ 週報vol,722寄稿)

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2014年4月23日

たけのこ

ノベンタの春の風物詩、山口のあんちゃんのたけのこが今年も届きました。
早速、皮を剥き、米汁でゆがきました。
(でも、あんちゃんいわく「うちのたけのこは灰汁抜きしなくてもおいしいんだゼ!」とのこと)
たけのこは、まだ土のあたたかさが残っているような新鮮さ。
やわらかく、包丁もさくさく通ります。
山口のあんちゃんのおかげで、
ハッシー(24)は今日、生まれて初めてたけのこの皮を剥くことができたのでした。
おいしくいただきます。(マツ記)

たけのこ たけのこ2 たけのこ4
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